キャラ研発信
サマリー
『インタラクティブゲームにおける脳内血流変化〜仮想現実はどこまで現実か?』
テレビゲームが家庭に普及し始めた当初から、テレビゲームが我々の発達や認知活動に与える影響については議論・研究され続けてきたが、未だ統一的な見解は得られていない現状がある。本研究では、テレビゲーム使用中の脳活動を調べることにより、この問題の客観的検証及び新たな知見の提供を試みた。
特にテレビゲームの特性による脳活動の違いを検討するため、ジャンルの異なる4種類のテレビゲームを行っているときの正中前頭部近傍の血流変化を、24チャンネルの同時計測が可能な近赤外分光法(near infra-red spectroscopy: NIRS)を用いて計測した。さらにテレビゲームとの比較対象として、簡単な加算作業をしているときの計測も行った。
●実験方法:
被験者は健常成人9名であった。下記2つの実験において、安静時と課題遂行時の脳活動を比較した。
テレビゲーム実験液晶モニタにテレビゲーム画面を映し、操作にはゲーム機のコントローラを用いた。
使用したテレビゲームは反射型2種類(シューティングとリズムアクション)と思考型2種類(ブロック落としとサイコロパズル)の計4種類であった。各ゲームにつき5分間の計測を行った。
加算作業液晶モニタ上部には3秒ごとに2つの数字が表示され、下部には0から9の数字が記されたボタンが常に表示されていた。被験者は上部に表示された2つの数字を加算し、マウスを用いてその答えの一の位が記されたボタンをクリックした。被験者は1試行を30秒(10問)とし、合計10試行行った。
●実験結果:
・加算作業とサイコロパズルでは、正中前頭部の活動にほとんど変化が見られなかったのに対し、シューティングとリズムアクション、ブロック落としでは正中前頭部の広い範囲で脳血流の減少が見られた。また加算作業とブロック落としで生じた脳活動の増加は、ともに測定部位の前方(前頭前部)に集中していた。
●考察:
本研究においてNIRSを用いて観測されたoxyHbの変化と神経活動との関連性は,未だ議論の余地があるものの,少なくとも計測部位においては神経活動が増加しなかったことを示していると考えられる。従って本研究により、テレビゲームのジャンルに寄らず、ゲーム中は正中前頭部の広い範囲で安静時以上の活動は生じていないことが明らかとなった。
また、より反射的な操作を必要とするテレビゲームの方が血流低下の範囲が広いこと、ゲームを遂行するために必要とされる能力に対応した部位の局所的な活動が生じることも示された。
本研究で得られた知見が必ずしも脳全体の活動低下を示唆するものでは「ない」ことに注意されたい.また,前頭部の一時的な血流低下が脳の発育に直接的な影響をもたらすか否かに関しては,本研究からは議論することは不可能であり,長期的な実証的研究の必要性を示唆している.今後は学習による効果や長期的な影響を明らかにするためのさらなる検討を行っていきたい。