キャラ研発信

サマリー

『音声キャラクターのデザイン技術とその評価』

●研究の動機:
音声合成技術の発展、コンピュータの性能向上により、Text-To-SpeechがPC上で容易に実現されるようになった。しかしCGによる人物がキャラクターとして認知、普及しているのに対して、これらの合成音声のキャラクターというのは、未だに普及するに至っていない。従来、CGキャラクターに対して、声優により音声が付けられるという制作手法がとられてきたが、CGキャラクターやロボットなどが人工知能を持ち、人間とリアルタイムにインタラクションをするコンテンツの場合には、音声合成と共にそのキャラクターが重要になってくるとともに合成音声によって音声をリアルタイムに生成する必要がある。この場合には従来の内容を正確に伝達するという目的の合成音声だけではなく、性格や個性といった音声キャラクターとして考慮する必要が生じてくるであろう。このことを踏まえて、今回は音声合成のキャラクターをデザインするという観点から、その制作技術の現状と将来像を提示すること。また、実際のアニメーション作品を題材に音声キャラクターが視覚的なキャラクターとどう関連して受容されるかを調査することによって、実際にデザインする場合の指針となることを想定して調査研究をおこなった。

●研究の方向性:
この研究の最終目標としたのは、音声キャラクターシンセサイザーである。これは、実際の音声をもとにその音声キャラクターを加工するものである。現在のところ、音声のキャラクター加工を意識的に操作できるツール、すなわち音声キャラクターシンセサイザーのようなものはあまり見受けられない。そのために、まずは基盤ソフトを使っての実際の制作を通して、必要であろうと思われる機能を、可能な部分から試作プログラムに実装し、その問題点を洗い出していった。このソフトウエア制作のための基盤ソフトとしては、STRAIGHTを採用した。

さらに現在のソフトウエアは音声の物理パラメータを直接操作するもので、将来的にはキャラクターの視覚的な情報から音声キャラクターを捕らえる必要があろう。そこで、心理実験を通して音声キャラクターと視覚的なキャラクターの基礎データを得ることを考える。本研究では、竹宮惠子氏の『地球(テラ)へ…』を題材に、 コミックやアニメーションの登場キャラクタの音声イメージがどのように印象づけられ変化するのかを、印象評定実験によって分析してみた。

●結果と今後の展開:
音声キャラクター シンセサイザーの開発・・・まず、STRAIGHTソフトウエアを元にして、音声キャラクターの基礎研究のためのユーザーインターフェイスを制作し、8月19〜26に開催されたメディアアートフェスティバル2002(http://1106.suac.net/MAF2002/)コンサート部門において今回の研究で試作したSTRAIGHTソフトウエアを利用した音楽作品を発表した。STRAIGHTソフトウエア-を基盤にしたのでその品質については、まだ改良の余地はあるものの実用に耐えるレベルにある。しかしながら、その音声品質を達成するためかなりの計算量が必要で、リアルタイムでの音声加工は現在では不可能である。(アルゴリズム自体はリアルタイムでの演算が可能なように考えられているのでコンピュータの性能が向上すれば、将来的には可能である。)結果的に、操作性や時間軸における編集等もまだプロトタイプレベルで実際の作品制作においては、かなりの時間が必要であった。

今後は音声のキャラクターに関連するであろう物理パラメータを操作するツールのプロトタイプを試作したに過ぎない。将来的にはそれらの成果がオーディオ編集ツールのプラグインになったり、声のキャラクターを自由に選べたり、状況に応じてキャラクターを変化できるロボットや対話型の玩具に応用できることができればと考える。

印象評定実験について・・・今回実験使用した刺激は、善玉・悪玉の分別も理解しやすく、各キャラクタの特徴の把握がしやすい箇所を採用したため、3キャラクタの特徴が際だって現れた。主要キャラクタの性格的特徴を反映させた音声化は、原作とアニメーションの内容的統一を図るためには必要不可欠な制作プロセスであり、コミックから得られる各キャラクタの総合的性質を十分にくみ取った上での「音声化」の重要性が、今回の実験によって改めて認識された。

●最後に:
この研究を開始した段階では、音声キャラクターを編集、加工を目的とした製品はほとんど見受けられなかったが、その後2年間の間に音楽製作ツールとして、相次いで音声の合成編集製品にフォルマント等の編集機能が搭載された。電子楽器による既存楽器の楽曲のシミュレーション (たとえばカラオケの演奏)が普及しているにもかかわらず、歌の部分は不可能だったことに対して、やっと技術的にアプローチできる段階にきたことを示している。また同時に、始まったばかりの分野だとみなすことができる。少しずつでも時間をかけて研究を継続したいと考えている。