キャラ研発信

時代レポート キャラクターの今が見える時代

キャラクターに癒しを求める現代人(1999.10発表)

今回の調査によれば、小学3年生から中学2年生までの男の子の95%がカードゲームで遊んだことがあり、74%がそのまま継続して現在も遊んでいることが明らかになった。
小学3〜6年生に限定すると、その数字も85%にまではねあがる。
ほとんどの少年たちが、トレーディングカードゲームで遊んだことがあり、また現在も遊び続けていると言えるだろう。 彼らはこの『トレーディングカードゲーム』に何を求めているのであろうか?
『トレーディングカードゲーム』には、『バトル』や『コレクション』、『トレード』、ひとり遊びである『デッキの構築』など、様々な楽しめる要素がある。
『サーチ』などと言って、『レアカード』が入っているかどうか、調べながら買うと言った、くじ引きにも似た購入の仕方や『情報交換』も、そのひとつと言っても良いかもしれない。
そんなトレーディングカードゲームではあるが、彼らはカードを、『まわりの人に自慢』するために持ちたいのではなく、それらの話題を活用して『誰とでも話をしたり遊んだりしたい』と思っている。
様々に楽しめる要素がある中でも、彼らは、とりわけ『バトル』が面白いと答えている。 その裏にあるのは、『勝ち続けて日本一になりたい』とか『誰それには常に勝ちたい』といった気持ちではなく、『勝ったり負けたりが面白い』『負けかけたときに逆転して勝つことが面白い』『何度でも続けてやりたい』といった声にも表れているような、繰り返し『どんでん返し』を楽しみたいという気持ちである。
そこには、プレイヤー同士で協力してつくられるドラマのような感動がある。
また、その『バトル』を楽しむうえでの、カードに書かれたルールの解釈などは、そこに居合わせたものの合議によって決められることも多い。 彼らはこの遊びを通じて、高度かつ、濃密なコミュニケーションを行っている。
『地域社会』『学校』『家庭』という、少年たちを取り巻く三つの空間が崩壊した、などと言われだしてから、ずいぶんと時間が経過している。
居場所を失った少年たちは、それでも人と人とのつながりを求めているのか、友達と共有できる『時間』と『場所』を求めているかのように集う。 路上やコンビニの前に意味も目的もなく座り込んでダベる。 友達の家に集まっても、それぞれはマンガを読んだりゲームをしたり、勝手なことをしたりしているが、とりあえずは一緒の場にいる。
ここには、クラブ活動のように時間をとられたり、義務になるようなアツクルシイのは嫌だけど、ひとりよりも、なんとなく誰かと一緒にいたい、という願望が表れているように思う。
そんなときに彼らの手元に来たのが『トレーディングカードゲーム』だったのではないだろうか。 お互いに、自分の『デッキ』を持った二人が対面すると、10分ほどの短い時間で『バトル』が可能となる。もちろん、時間の許す限り繰り返すことも可能だ。 自分のデッキをより強くするためにカードを『トレード』したりすることによって、共通の話題で盛り上がれる。
どこででも、誰とでも出来る、そしていつでも終われる対面のコミュニケーション。 バトルを始めることで、そこに共有される『場』が形成される。 『自分の家』『友達の家』『玩具店』『カードショップ』『イベント会場』それぞれが四つ目の空間として機能し始める。 『トレーディングカードゲーム』は、彼らにとって掛け替えのないコミュニケーションツールであるばかりか、失われた『場』をつくり出すための"魔法の道具"とも言えるのではないだろうか。
今回の調査を行うにあたって、私は、比較的明確にユーザーが、『ヘビーゲーマー』『ライトゲーマー』そして、『コレクションユーザー』に分かれ、ピラミッド構造が構築されているのであろうと仮説を立てた。
難易度の高いゲーム(バトル)を楽しむ少数派と、『コンプリート(カードを全て揃えること)』に満足する多数の『コレクションユーザー』によって、このブームが支えられているのであろうと考えたのだ。
しかし実際には、多くの少年たちが自由に『バトル』を楽しんでいることがわかった。 『イチバン強くなりたい』というクラスアップの志向や、『コンプリート』を目指した『コレクション至上主義』のような、決められたワクを埋めて行くような志向はかえって希薄である。
学校や塾、習い事などの合間の短い時間、その場に居合わせた相手と楽しく盛り上がれる『遊び』としての『トレーディングカードゲーム』。 そこには旧来の『ピラミッド構造』のようなものより、若者の『ケータイ(携帯電話)つながり』にも似た、ゆるやかな『ヨコのつながり』が見えるような気がする。
少年たちのコミュニケーションのあり方は、常に変容している。 『遊び』が、彼らのコミュニケーションを変えてゆくのか、彼らのコミュケーションの変容に求められ、新しい『遊び』が誕生してゆくのか。 多分、そのどちらでもあるのだろうが、彼らの『遊び 』を見ることで、その時代の変化を見つけることが出来ると、我々は考えている。

(株)バンダイ キャラクター研究所     新井信広